遥か6000キロ先の大地、豪州。 遠く、遠く、知らねば永遠に見ぬ、人と文化と大地。 その土地の人柄、食に伝統文化、自然そのもの。 触れてみて、日本と違うことを知った。 だが真に「遠く」というわけではない。 数々の得難い経験をした、48時間電車の旅。(これはこれですばらしいのだが) 豪州までは9時間だ。 さらに、真に「違う」というわけではない。 たかだか、言葉や文化が違うだけ。人と人がいて、 会話をしてから生きているのは変わらない。 世界は広かった。 だけど、そんなに境目はない。 お隣さんの延長に世界が続いていた。 ああ、僕たちも世界の一員なんだなぁ。
6000キロ。 飛行機より見下ろす、海に森。 そう、今この眼下に見下ろすその場所に、 見たこともない、文化があり、人々が生きている。 広がる熱帯雨林の、その奥の、何も知らぬ原住民たちは、 遥か天空より見られていたこともわからず、一生を終えるかも知れぬ。 飛行機とわかって見上げる人もいるだろう。 これを飛行機と初めて知る者もいるかも知れぬ。 なんだろう、この世界の広さは。こんなにも、人と文化があるのか。 たかだか往復18時間で、自分の小ささを知る。 なんだか奇妙な感覚が、今僕をつつんでいる。
その理由は、なんだろう。 今、ここでこうなった理由はなんだろう。
ほんの少しの、場所と時間がずれるだけで その友に会うことはなかった。 ほんの少しの、言葉を思いつかなかっただけで、 その人と親しくはならなかった。
今、こうしているのは、何のため? 出会ったのは必然だったのか、偶然だったのか。
「必要な段階に至ったとき、必要なものが現れる」 その人の中にある、僕に必要なもの。 僕の中にある、その人の必要なもの。
後になれば、きっとわかるのだろうけど、 すぐにわからない、その理由がどうにももどかしい。
「ヴァーーーッ・・・ヴッヴーーーーン」 今、僕が駆け行く大地は・・・阿蘇。 眼下に雲海を見下ろしながら、迸るような命を宿した大地の中を、僕は走っている。 天にまで轟いているようなこの道を、僕は走っている。
駆け抜く風には、ひとつとして同じものがない。 胸を透く風は、その瞬間瞬間に表情を変える。
爽快な風、清涼な風、 阿蘇の黒土と草いきれを運ぶ風。 牧場の動物たちの生を伝える風。 それら全てに、この雄大なる阿蘇の大地の息吹を感じる。
身を委ね、風の中をたゆたい、世界との一体感と歓喜に震えながら・・・・駆け抜ける。 阿蘇。 ライダーの夏は、ここから始まる。